Translator's BLOG

夏ですね。

映画館にこもりたくなる季節です♡

暑くなるとジメッとした映画を避けて、背筋の凍るようなホラーやスカッとするアクションが観たくなります。

単純なのでね。


というわけで観ました。『スーパーマン』

ジェームズ・ガン監督の待望の新作とあり、周りでも期待の声が高かったDC作品。

いや~面白かった!

ただ強いだけじゃない、最も人間(マン)らしい悩めるスーパーマン。

どんなに地球のために戦っても、自分は異邦人(エイリアン)でしかないのか。

世界中で起きている移民排斥の動きに疑問を投げかけるテーマになっています。


スーパーマン役のデイビッド・コレンスウェットがたまに見せる気弱な表情が何とも良く、敵役レックス・ルーサー役のニコラス・ホルト(『陪審員2番』の彼!)もハマり役。

だけど、今回のMVPは何と言っても、スーパードッグのクリプト

もう冒頭から「え~!?」と声が出ちゃうほどの活躍(?)ぶり。

じゃれ方が激しすぎて、かわいすぎる。そしてちょっとおバカ♡

ちなみに冒頭のシーンが『ドラゴンボール』へのオマージュと思ってしまうのは、私だけ?


字幕はわが師匠アンゼたかしさん。吹替も担当していて、こちらも観たい!

ものすごいセリフ量ですが、作品世界にピッタリの字幕で、クスッと笑えるセリフも見事に日本語で表現していました。

あれもこれもメモしたかったけれど、映画にのめりこんでしまったので、2つだけご紹介。


傷ついたスーパーマンを見たサポートロボットのセリフ

Our poor Superman.

(字幕)おいたわしい


ルーサーがスーパーマンの背後で言い放つセリフ。

Superman.

He’s not a man. He’s an it.

(字幕)スーパーマン

    “人”じゃない 異物だ   *「人」に「マン」のルビ


もうね、ロボットの言い方が「おいたわしい」以外の何ものでもないんです。

自分には感情がないと言い張るロボットなだけに、かえってキュンとしちゃいました。

Itを「異物」と言い切った訳もかっこいい!

スーパーマンを傷つけるセリフなので、これくらいの強さがピッタリ。師匠、さすがです!


とにかく今までにない人間らしいスーパーマン。私は一番好き♡

次作が楽しみです!


鬼滅目当ての人混みでポスターが見つけられなかったので、クリアファイルの写真をパチリ。意外といいかも?

あっという間に2か月も空いてしまいました。

インスタを見ていただいている方はご存じのとおり、アイスランド&フランスの旅へ出ていました。

フランスは去年に引き続き、仕事のためのブラッシュアップも兼ねてですが、アイスランドは初上陸! ず~っと行きたかった国なので、航空券を予約した日からドキドキワクワク♡

初めは1人旅の予定で準備。ところが出発の1週間前に、大学時代の友人がドイツから参加することに。宿泊先や現地ツアーを変更してバタバタしましたが、結果的に1人より2人のほうが何倍も楽しい旅になりました!


そもそも、アイスランドに行きたいと思ったきっかけは、高校時代のカナダ留学でアイスランド人の友人と出会ったこと。留学先がものすごい田舎だったこともあり、留学生でよくつるんでは、ブーブー文句を言ってました。振り返ると反省することだらけですが、高校生にとって遊ぶ場所がないというのは、結構つらかったんです。

その後、音信不通になったものの、FBでつながり、たま~にやりとりをするようになり、彼が投稿する写真を見ては興味を募らせていました。今回、3●年ぶりに再会を実現! ローカルならではのスポットへ案内してもらったり、ご自宅へ食事に招いてもらいました。感謝♡


もう1つ行きたかった理由は、アイスランドの映画を何本か訳したから。そこに映し出される風景や、人々の暮らしに惹かれました。

私が訳した映画は、こちら。

『たちあがる女』

『ハートストーン』

『好きにならずにいられない』

他にもドラマを何本か訳しています。

実は『好きにならずにいられない』には、先ほどのアイスランド人の友人が出演していました!

翻訳中には知らなかったのですが、公開のお知らせをFBに載せたところ、彼から「出演してる」と連絡が。監督が知り合いで、警官役で出ていたのだそうです。当時、彼は本当に警官で、彼の趣味の部屋も撮影で使われていました。見直したけれど、高校生の頃の面影がなくて分からなかったのは内緒。


そんなこんなで訪れた念願のアイスランド。今まで訪れたどの国ともまったく違う、見たことのない壮大な風景が広がっていました。ざっくり言うと、ザ・地球! 火と氷の国と言われるとおり、活火山と滝と氷河が大地の大半を占め、地球の活動を目の当たりにする感じ。1つ1つの規模が大きすぎて、自然がすばらしすぎて、生き物がちっぽけすぎて、こんな私が地球に住まわせてもらってありがとうという気持ちになりました。変な言い方だけれど、肩の荷が下りるというか、ホッとする感じ。

しょせん人間がどうあがいたところで、自然にはかなわない。だったら、今の状況を受け入れて、ここにいる奇跡をただただ味わおう。そんな諦めに似た、でも今という瞬間が尊くなるような、幸せな気持ちになりました。


そして、映画で見た景色をこの目で見るのは、とにかく感動します♡

『たちあがる女』で倒していた鉄塔や、『ハートストーン』でキャンプをしていた草原や、さらには大好きな『インターステラ-』の氷河や、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の巨大な岩に囲まれたエリアなど、心の中できゃーきゃー叫んでいました。

ちなみに、アイスランドでは映画産業への税制優遇があり、海外からのロケも積極的に受け入れているのだそう。人口40万人ほどの小さな国なのに、質の高い映画が多いのも納得です。

まだまだシェアしたいことがたくさんありますが、今回はここまで。またタイミングを見て書きますね。

そうそう、機内のビデオに字幕担当作『We Live in Time この時を生きて』がありました。ひとりで、ほくそ笑んだ私です。

新しいローマ教皇を決めるコンクラーベが始まりますね。世界中から枢機卿が集まって行う秘密投票と聞くだけで、好奇心がかき立てられます。

私が初めてコンクラーベを知ったのは、ダン・ブラウン『天使と悪魔』でした。そして今、その神秘に迫る映画『教皇選挙』が話題沸騰中。

先日ようやく観てきたのですが、どの回も満席。映画館があんなにごった返しているのを、久しぶりに見ました。それだけでも、ワクワクします。


映画は前評判どおり、キリキリするような心理サスペンス。立派な枢機卿たちがタヌキに見えてくるほど(失礼!)、化かし合いと腹の探り合いがすさまじい。

脚本(脚色)は『裏切りのサーカス』ピーター・ストローハンなんですね。納得!監督は『西部戦線異状なし』エドワード・ベルガー。主役のレイフ・ファインズもハマり役でした。


ストーリーについては、鑑賞後に公式サイトにある大人気ライターISOさんのネタバレ解説を読んでいただくとして、翻訳者としては、やはり字幕に触れられずにいられません!


もうね、同業者の間で話題になるほど、渡邉貴子さんの字幕が素晴らしいんです。前にドラマの翻訳でご一緒した時に、歴史ものにピッタリの格調高い渡邉さんの訳に、「これぞ美しい日本語」とうなりました。

『教皇選挙』では、日本人になじみのないテーマで専門用語が飛び交い、英語とイタリア語とスペイン語とラテン語と…いくつもの言語が使われ、セリフ劇のミステリー。想像するだけで、はげそうです。

それを字数制限の中で必要な情報を入れつつ読みやすく整理して、なおかつ作品に合った日本語にするという神業。


さらに、短い決めゼリフの訳がまたカッコいいんです!

例えば、同業の友人があげていた、こちらの字幕。レイフ・ファインズが型通りのスピーチを切り上げる時のひと言。


But you all know that.

つまらんな


はい、これ、私も「うお!」って声が出そうでした。

こちらも好き。


Don’t be naive!

きれい事を!


こういう短いセリフの字幕が、話者の表情や声のトーンとピタッと合うと気持ちいい!

どこのセリフかは、ぜひ劇場でご確認ください。

本当はもっと長い字幕もあげたいんですが、書き取る余裕はまったくありませんでした。

作品と字幕(吹替もね)が合うと、こんなにどっぷりと作品の世界観に浸れるのだと、改めて実感した作品でした。


そんなわけで、美しい字幕に大いに刺激を受けたので、いつもより多めに見直しをしている今日この頃。

そうそう、『裏切りのサーカス』では松浦美奈さんの神訳(字幕)が同業者の間で話題になりました。

こちらも心からお薦めです!


☆担当作公開情報☆

『名画泥棒 ルーベン・ブラント』EUフィルムデーズ2025にて公開!(5月17日、20日)

*ハンガリーのアニメ作品。強迫性障害を患う一風変わった犯罪者たちを、アートセラピーで診る精神科医ルーベン、自身も名画のモチーフに襲われる悪夢に悩まされていた。独特のタッチで描くシュールでアートな大人のアニメ。音楽も凝っていて、オリジナリティ溢れる快作!


『We Live In Time この時を生きて』6月6日より全国順次公開!

*自由奔放な新進気鋭のシェフ、アルムート(フローレンス・ピュー)と、慎重で穏やかなデータ管理職のトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)の愛の物語。2人のケミストリーが最高で、生きる喜びを心の底から感じられる素敵な作品です♡



前回の更新から間が空いてしまいました。

翻訳の仕事が詰まるとブログを書きたくなるけれど、書く仕事が続くとブログがおざなりになるという…。

どんな発信手段であれ、定期投稿を続けている方々を改めて尊敬いたします。


今回は、ずっと書きたかった読書日記をお届けします。テーマは、USJ再建の立役者として知られる森岡毅さんのビジネス書『苦しかったときの話をしようか』。マーケティングの視点からキャリア設計を解説した一冊で、少し前に読んで強く感銘を受けました。

ビジネス書と言っても、就職活動に悩む娘さんに向けて書かれたものなので、私のようなマーケ知識ゼロの読者でも分かりやすい!

キャリアの設計図と書きましたが、仕事は人生の目的に向かうための手段、豊かな人生を送るためにもパースペクティブ(視野)を広げよう、そのためにどうする?という人生指南にもなっています。


詳しくは本書を読んでもらうとして、私が深くうなずいたのは、こちら。

キャリアの目的を見つけるには「具体的な“こと”から発想するのではなく、“どんな状態”であれば自分はハッピーだろうかという未来の理想“状態”から発想すること」

確かに、字幕翻訳を始めた頃に「劇場公開作を手がける」という具体的な目標を掲げていた頃と、「映画やドラマの翻訳をしながら、大好きな人たちと笑って過ごし、たまにフラッと旅に出る生活」という”状態”を目的にしている今とでは、日々の過ごし方や仕事への取り組み方が一変しました。

理想の"状態"を明確にすることの効果を実感。本当におすすめのアプローチです!


仕事を選ぶうえで「自分の強みを生かせ」とはよく言われますが、じゃあ自分の強みって何?という話も面白い。

本書では、その強み(特徴)を3分類しています。

・Tの人(Thinking)

・Cの人(Communication)

・Lの人(Leadership)


詳しい分類の仕方と説明は割愛して、笑っちゃったのが、私はかなり偏ったCの人だということ。

Cの人は「強い対人コミュニケーションを武器に使い、人と人を繋げることで新たな価値を生み出していく」。ま~さ~に!

翻訳だけをやっていた頃より、憧れの諸先輩方にインタビューしたり、志を同じくする仲間の話を記事にしたり、同業者を繋げる映像翻訳者の会を作ったりしてからのほうが、人生を何倍も楽しんでます。


ここ数年、「自分の役割を知り、まっとうする」ということを意識しているのですが、私の役割は人を繋ぐこと。「これでいいのだ」と、お墨付きをもらった気がしました。


森岡さんが自分の弱みをカバーするために、必死に強みを磨き上げる話もグッときます。Kindleで読んだのですが、息子たちにも読んでほしいから紙でも買っちゃいそう。

最後に森岡さんの言葉を皆さんと私に贈ります。

「方向だけは間違わず、遠くに向かって思い切りぶっ飛べ!」

私からの補足を一つ。人生の道は修正可能です。方向が少々違っても軌道修正すればいい。

まずは思い切りぶっ飛んでみましょう!

ただいま、字幕担当作『Playground / 校庭』が公開中なので、SNSなどでせっせと宣伝しています。

おかげさまで好評のようで、あちこちのメディアで紹介されています。友人や知人から直接ご感想もいただき、ほんっとうに嬉しいです! ありがとうございます。


こうして宣伝しているときって、「ご活躍ですね」とか「お忙しそう」と言われるのですが、そうとは限りません(キッパリ)!

担当作が公開されたり配信されている頃には、作品はすっかり手を離れているので、別の作品が手元になければヒマです。で、今の私がその状態です。

作品の公開が続くと「いつも忙しそうな売れっ子」感がありますが、そこはフリーランス。プツッと仕事が途絶えるときがあります。

そんなとき、どうする?というお話。


キャリアが浅い頃は、仕事が途絶えるたびに「何かやらかした?」と青ざめていましたが、さすがに経歴20年を超えると肝が据わります。

「そういう時期なんだな」と、達観というか、あきらめの境地。ジタバタしなくなりました。

だからといって、何もしないわけではありません。次の仕事のために何ができるか考えて、できることをやっていきます。

作品リストを見直して制作会社に送ったり、Wakkaの公開プロフを更新したり、オンライン講座の準備をしたり(4月から始まります!)。


それから、ここぞとばかりに映画館に足を運びます。

だって、今は観たい映画が目白押し。しかも、敬愛する諸先輩方が字幕を手がけているとあらば、学ぶことばかり。

メモを片手に行きますが、結局のめりこんで観てしまい、読めない走り書きが残るだけ。それもまた楽し♪

諸先輩だけでなく、友人知人が字幕を手がける作品も多く、そんなときは学びと共に「私もがんばろ!」と刺激ももらいます。

(実際の心の叫びは「クソ~!私も訳したいぞ!」なのは内緒。これもモチベーションアップの秘訣!)


もちろん、旅をしたり、人に会ったりも。これが何よりの私の活力源ですから。

少し前までは、スケジュールが空きそうになると、やたらと予定を詰め込んでいました。そうすると、急に仕事が入ったときにドタキャン大王に変身。

さすがに学んだので、今はスケジュールにゆとりを持たせて組んでいます。


そうこうしているうちに、また仕事に追われる日々がやってきます(絶対に!)。そのときに慌てないように備えて、気力と活力を満たしておくのが私のヒマなときの過ごし方。


そうそう、翻訳脳を眠らせないようにするのも、大事なポイント。

仕事を忘れて思い切り楽しみつつも、翻訳脳は少しでも動かしておくことを意識しています。

私にとってはブログを書いたり、本を読んだり、映画を観たりすることも、翻訳脳を鍛える手段になってます。人と話すことも、その1つ。

翻訳の勉強そのものじゃなくても、日本語のインプットとアウトプットをすることで、翻訳に必要な想像力や表現の幅が広がります。


さて、今週は『ウィキッド』を観る予定。楽しみ!


4月開講の字幕翻訳のオンライン講座「岩辺ゼミ」の募集が始まりました。「岩辺ゼミ」って何だかカッコいい!

ご興味のある方は、リンクをどうぞ♪

アカデミー賞の授賞式に合わせて受賞作やノミネート作の映画公開が続いています。

映画ファンにとっては嬉しい悲鳴を上げる日々。もう少し公開をずらして~!と叫びつつ、仕事の隙を見ては、いそいそと映画館に通っています。


ボブ・ディランの無名時代からスターになる数年を描いた『名もなき者』は、シャラメのなりきりぶりも、石田泰子さんの字幕(特に歌詞!)も最高!キャストも音楽も歌詞も素晴らしくて必見です。


で・す・が、そのあとに観た『アノーラ』が好きすぎました!

アメリカのセックスワーカーを温かい目で撮り続けるショーン・ベイカー監督ですが、今回はロシアの大富豪が絡んで話の規模が大きくなり、ドタバタコメディ要素も満載。「シンデレラ・ストーリー」の宣伝文句を「け!」と一蹴するような小気味よさ。カンヌやアカデミーの賞を総なめしたのも納得。


アメリカ社会の底辺のほうに生きる人々を包み込むように、同情せずジャッジせず成長を促しもせず、ありのままに描くベイカー作品は、ライムスター宇多丸さん「落語の長屋もの」という評が言い得て妙! 男性は愛すべきクズで、女性はしたたかでたくましい。

字幕を担当させていただいた『レッド・ロケット』はクズ男が主人公で「こいつ、クソだな」と思いながら訳しましたが(失礼!)。

今回の『アノーラ』(字幕は吉川美奈子さん)は大好きな『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(字幕は石田泰子さん)の女の子がそのまま大きくなったような、ちょっと繋がった感じがしました。


でね、『アノーラ』を観たあとに「あ~訳したかったな!」って思ったんです。吉川さんの字幕は素晴らしくて、それをどうこうしたいというんじゃなくて、ただ好きだから訳したい!

社会からはみ出した人たちを描いた作品が好きで、そういう人たちの感情が溢れ出る言葉を訳すのが好き。その人の本音が見える言葉や会話、心をぶつけ合うような言い合い。それをピッタリの日本語に変換できたと思えた時が最高!

改めて、そう実感しました。

私にとって、ロードムービーも天才や偉人の人生譚も、おなかがキリキリするようなサスペンスも、サイコな殺人鬼やマッドサイエンティストのホラーも、弾けまくったミュージカルもキラッキラなファンタジーも、多かれ少なかれ世間からはみだした人たちの物語。だから、好きなジャンルを聞かれると、ちょっと困るのかも。


さて、現在公開中の字幕担当作『Playground / 校庭』も、小学校になかなかなじめず“はみだしてる”ノラちゃんのお話。アカデミー賞絡みの大作がズラリと並ぶ中、健闘しております!映画館で没入して観たい作品なので、劇場へ足を運んでいただけると嬉しいです。


また、フランス映画祭2025で公開される字幕担当作『My Everything』は、発達障害の息子の自立と向き合うシングルマザーのお話。こちらも、彼女の本音が炸裂するセリフが刺さりすぎて、訳すのが痛かったくらいです。3月22日の上映日には、監督の舞台挨拶もあります。タイミングが合えば、こちらもぜひ!


というわけで、しばらく映画日記が続きそうな予感です♡

アカデミー賞の発表が近づいてきましたね。それに合わせてノミネート作品が続々と日本公開され、映画好きとしては嬉しいやら慌ただしいやら落ち着きません。


そんな中、字幕担当作『Playground / 校庭』が3月7日に公開されます!

こちら、カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞アカデミー賞国際長編映画賞ショートリスト選出のベルギー映画。72分と短いながらも、凝縮された世界観に圧倒される作品です。


小学校に上がったばかりの少女ノラは引っ込み思案で、大好きなお兄ちゃんのアベルだけが頼り。だけど、学校で会うお兄ちゃんは冷たくて、友達はなかなかできないし、体育の授業はちょっと怖い。それでも、少しずつ学校に馴染んでいくにつれて、家族の見え方も変わってきて・・・。

音楽なしで、ひたすらノラの目線とアップを追って描かれる学校という世界。それまで大好きな家族に包まれていた世界が揺らぐ不安、大人の目線とのズレ、どうしたらいいか分からなくて、いっぱいいっぱいな気持ち。ノラの気持ちがスクリーンから溢れ出て、自分の小学校の記憶と重ねてしまいます。「あ~そうだったな」って。

この作品を観ると、正解を教えてくれる大人より、一緒に悩んでくれる大人の存在がどんなにありがたいか分かります。そういう大人、私が子供の時にいた覚えがない。いてくれたら、また違ったかな。・・・そんなことを、あれこれ考えながら訳しました。


翻訳の話を少しすると、子供の言葉って字幕にしにくいんです。字数制限がある中で「兄」としたいけれど、やっぱりノラの年なら「お兄ちゃん」か名前の「アベル」だし、難しい漢字が並ぶのも違和感があるし、かといって平仮名ばかりだと読みにくい。ちょっと無駄のある言い方をするのが子供ならではだったりするし。それでも、子供の口調を考えるのは楽しかった♡


派手さはないけれど、心の奥底に響く作品です。ぜひぜひ、いろんな方に観てほしい。

憧れの文芸翻訳家、三辺律子さんがX(旧ツイッター)で絶賛してくれているのも嬉しかったです♡

地域によっては4月以降の公開になるようです。出会いと別れの季節にぜひ♪

こんにちは。

2月とは思えない暖かな週末、鎌倉に字幕翻訳者と関係者が大集合しました。

と言っても、そんなことになるとは思わず、あるトークイベントに参加したら、あちらもこちらも関係者だった、という話。


トークイベントは鎌倉市川喜多映画記念館企画展「映画字幕翻訳の仕事 1秒4文字の魔術」の一環で、ザ・字幕翻訳者の菊地浩司さん石田泰子さんが対談するというもの。

タイトルは「血の通った字幕をつくるために」。もうこれだけでカッコいい♡


憧れの大先輩方のお話を生で聴けるということで、Wakkaの翻訳仲間と喜び勇んで駆けつけました。大阪、京都から参加したツワモノも!

いや、このお2人の対談とあらば、新幹線でも飛行機でも来る気持ち、分かります。


会場に着くとゼミでお世話になったAZ先生(いちおう伏せてみる)をはじめ、スクリーンでよく名前を目にする方々が何人もいて、舞い上がっちゃいました。

制作会社や配給会社など映画関係者の方々も! メールのやり取りだけだった方や、お久しぶりの方々にも会えて感無量♡

トークの内容も、先人たちが映画字幕と真摯に向き合ってきたおかげで今があるということがよく分かり、背筋が伸びる思いでした。


イベントのあとは鎌倉散歩をしながら鶴岡八幡宮でお参りをして、プチオフ会。

ほどよい人数で、初めましての方ともゆっくり話せて楽しかった~!

字幕翻訳に携わる喜びを、じっくりと嚙み締めた一日でした。

それもこれも、イベントのチケット取りからプチオフ会まで企画して、裏道を案内してくれた鎌倉在住の映像翻訳者Masakiさんのおかげ♡

ありがとうございました!


企画展は3月いっぱいまで。3月29日には『瞳を閉じて』の上映つきで字幕を担当された原田りえさんのトークイベントがあります!

他にも映画の上映があるし(ジャック・ドゥミの『ローラ』も!)、建物もステキなので鎌倉散歩のついでにぜひ♪

舞い上がりすぎて企画展を観る時間がなかったので、私も出直します。

2月です。節分を終えて立春を迎え、旧暦の新年が始まりました。

今年は映画日記も月1で書こうと思います。はい、旧暦スタートです。

「この字幕が好き!」シリーズも続けますが、メモを取らなきゃと思うと素直に楽しめないので、のんびりやります♡


初回はクリント・イーストウッド監督の『陪審員2番』

年初に観た『ロボット・ドリームズ』も、とっても好きで迷ったのですが、字幕翻訳者のブログということで、こちらにしました。

『ロボット・ドリームズ』の字幕は10~20枚ほど? 少ないからこその難しさもありますが、それはまた別の機会に。とてもいい作品なので、ぜひご覧ください♡)


イーストウッド最後の作品とも言われ、93歳の時に撮影を開始し、94歳で完成。すごすぎます!

正直なところ、彼の作品には苦手なものもあるのですが、本作は素晴らしかったです。ずっと緊張感が続き、本来なら劇場でおなかがキリキリしながら観たい作品。

イーストウッドらしいアメリカの良心を問う内容で、カメラが1人1人の心情をあぶり出している。観終わったあとも、ベッドの中でグルグル考えちゃいました。(夜は観ないほうがいいかも?)

トニ・コレットとニコラス・ホルト(『アバウト・ア・ボーイ』の男の子なんですね)の目が頭から離れません!


字幕は、われらがチオキ真理さん!

それぞれのキャラがしっかり出ているし、法律用語が飛び交う裁判シーンも要点を押さえていて分かりやすい。緻密な字幕、と言えば伝わるでしょうか。友達だよ!と自慢しておきます♡


素晴らしい作品なのに、アカデミー賞の賞レースに絡んでないのが不思議。せめて脚本賞にノミネートされてもいいのでは?

ドイツの友人に薦めたら、向こうでは劇場公開をしていたとか。うらやましい!

日本ではU-NEXTでの配信のみなのが本当に残念。観られる環境にあるラッキーな方、必見です!

★2025年公開!

『Playground / 校庭』3月7日公開

小学校という新しい世界に入った引っ込み思案のノラ。知らないことだらけで、なかなか馴染めず、頼りは大好きなお兄ちゃんだけ。やがて学校に慣れるにつれ、お兄ちゃんやパパを見る目も変わってきて…。子供の目線と大人の目線のズレをあぶり出し、忘れていた気持ちを思い出させるベルギーの作品。カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞受賞。


『We Live in Time この時を生きて』6月6日公開

離婚したてで傷心のトビアスと自分の店を持つ人気シェフ、アルムート。2人が共に生きる姿を、時間軸を交錯させながら紡ぐ物語。口の悪いフローレンス・ピューと気弱なアンドリュー・ガーフィールドのケミストリーが最高♡ 笑って泣いて愛に包まれる大好きな作品!


フランス映画祭2025『My Everything』3月22日上映

発達障害の息子を育てるシングルマザーのモナ。大切に育ててきた息子が恋人の妊娠を機に、自立を求めるようになり、戸惑うモナの心が繊細に描かれます。息子を持つ母親として気持ちがわかりすぎて、私のところに来てくれてありがとうと思いながら訳しました。全国公開しますように♡



★代表作

【劇場公開作品】

『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』

イギリスのシンドラーと呼ばれるニコラス・ウィントンの半生を描いたヒューマンドラマ。第2次世界大戦の勃発前夜、チェコのユダヤ系の子供たちをイギリスへ逃がすニコラスと仲間たち。50年が過ぎても救えなかった子たちを思い、口をつぐむ老ニコラスの姿が胸を打ちます。アンソニー・ホプキンスが素晴らしい!


『ブリーディング・ラブ はじまりの旅』

ユアン・マクレガーが娘クララ・マクレガーのラブコールに応えて実現した共演作。クララが脚本に参加しているだけあり、離れて暮らしていた父娘の会話がリアルです。2人がタイトルにもなっている「ブリーディング・ラブ」を熱唱するシーンは胸アツ♡ アメリカが舞台のロードムービー。


『SONG OF EARTH / ソング・オブ・アース』

ノルウェーの山岳部に住む老いた両親を、娘が撮るドキュメンタリー。自然を深く愛する父親の言葉が心に響き、悠大で時に残酷な自然の光景に圧倒されます。人生について考えさせられる作品。


『ビヨンド・ユートピア 脱北』

北朝鮮と脱北者のリアルを、脱北者のインタビューと脱北支援者の活動を中心に描くドキュメンタリー。「安全な国」を目指す脱北家族を追う映像は手に汗を握ります。よくここまで撮れたという驚きと、北朝鮮の状況に背筋が寒くなる作品。英語スクリプトから翻訳し、北朝鮮の事情に詳しい方に監修をしていただきました。(訳しているうちに怖くなり、翻訳者クレジットを外してもらいました…。わがままを聞いていただいた配給会社に感謝いたします!)


『ダンサー イン Paris』

セドリック・クラピッシュ監督が描くダンス映画。パリ・オペラ座のプルミエール・ダンスーズ、マリオン・バルボーがケガでバレエを諦めて自分と向き合うエリーズを熱演。コンテンポラリーダンスの振付師ホフェッシュ・シェクターが本人役で登場し、音楽も担当。すべてのダンス好きとクラピッシュ好きに、ダンス好き翻訳者(私)が自信を持ってお薦めします!


『サントメール ある被告』

希望を胸に渡仏したセネガル人の女性は、なぜ生後間もない娘を殺したのか? 本人も「分からない」という真相を、裁判官や弁護士たちの問いかけで紐解いていく。じわじわと心に響く、実際の事件に基づく法廷劇。ヴェネチア映画祭銀獅子賞(審査員大賞)受賞。


『カード・カウンター』

名作『タクシードライバー』のコンビ、ポール・シュナイダー脚本/監督&マーティン・スコセッシ製作総指揮の話題作。軍刑務所に服役後、ギャンブラーとして各地を転々とするウィリアム・テル(オスカー・アイザック)の謎めいた過去と贖罪を描くハードボイルド。


『レッド・ロケット』

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』のショーン・ベイカー監督最新作、A24北米配給。落ちぶれた元ポルノスター♂が再起をかけて騒ぎを起こすサクセス(?)ストーリー!


『The Son / 息子』

ヒュー・ジャックマン主演、『ファーザー』のフロリアン・ゼレール監督最新作。再婚して幸せに暮らしていたピーターの元に、前妻と暮らしていた17歳の息子が一緒に暮らしたいと訴える。父親と息子の関係を描くヒューマンドラマ。ピーターの父親役アンソニー・ホプキンスのすごみも必見。


『ビリー・ホリデイ物語 Lady Day at Emerson's Grill and Bar』(松竹ブロードウェイシネマ)

1959年、伝説の歌手ビリー・ホリデイが死の4か月前に、フィラデルフィアのジャズクラブで歌う・・・。そんな設定でトニー賞6度受賞のオードラ・マクドナルドが演じた舞台を映像化。歌の合間に昔を懐かしんで語るビリー。しだいに危うさを増す語りと力強い歌声に引き込まれます。


『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』

19世紀末~20世紀初頭に猫を擬人化したイラストで人気を博したルイス・ウェインを、ベネディクト・カンバーバッチが熱演。統合失調症を患った彼を大きな愛で包む妻をクレア・フォイが演じます。ルイスの数奇な運命を、ユーモラスな猫のイラストと美しい映像で描くヒューマンドラマ。大好きな作品です!


『ストレイ 犬が見た世界』

*トルコのイスタンブールの路上で暮らす犬を追ったドキュメンタリー。2000年から犬の殺処分を禁止しているトルコで、犬と人が共存する姿が新鮮です。淡々とした流れの中で、移民などトルコが抱える問題が浮き彫りになり、余韻の残る作品です。犬の表情がすごくいい!


東京国際映画祭2022『クロンダイク』2022年10月27日、31日、11月2日

ウクライナのドネツク地方で起きた2014年のマレーシア航空機撃墜事件と絡めた物語。親ロシア派が占領する村に住む夫婦の緊迫した生活を、臨月の妻の目線で追います。サンダンス映画祭監督賞受賞。ウクライナ/トルコ合作。


キノフェス2022上映作品『ロスト・プリンス』『マイ・ドッグ・ステューピッド』

どちらも超絶お薦めのフランス映画。キノフィルムズが主催する映画祭で1週間ずつの限定上映です! 立川、横浜、天神(博多)と場所が限られますが、お近くの方はぜひ♪

『ロスト・プリンス』

日本でも人気のオマール・シー(『最強のふたり』『ルパン』)が娘に自作の物語を聞かせるシングルファザーを演じるファンタジックな作品。思春期の娘との距離感に悩む姿がいとおしい♡

『マイ・ドッグ・ステューピッド』

スランプを家族のせいにする中年作家が、おバカな犬を拾ったことから家族と向き合う物語。リアル夫婦のイヴァン・アタルとシャルロット・ゲンズブールの会話が、子供の巣立ちを迎える世代に刺さります! 特にアラフィフ~に観てほしい♡


『プレゼント・ラフター』(松竹ブロードウェイシネマ

*ブロードウェイやウエスト・エンドの舞台をそのまま映像で届けるシリーズ。1900年代のロンドンを舞台に、中年の危機にある俳優ギャリーと元妻たちが繰り広げるシチュエーション・コメディ。当時のポップ・アイコンでもあったノエル・カワードの戯曲を、マイケル・クライン主演で実現。コビー・スマルダーも登場。クスッと笑える台詞が多く、日本では三谷幸喜の世界観に近いかも。


キンキーブーツ(松竹ブロードウェイシネマシリーズ版)

*ロンドンで上演された舞台をそのまま映像にした作品。実話を元にした同名映画をミュージカルの舞台にしたものです。シンディ・ローパーの音楽がハッピーで切なくて、それを伝える訳詞を心がけました。客席の笑い声も入るので、ジョークの訳や字幕を出すタイミングにも悩んだ作品です。見終わったあと元気になれるので、ローラの愛に包まれてください♡

●こちらもお薦め→同シリーズ『プレゼント・ラフター』『シラノ・ド・ベルジュラック』『ロミオとジュリエット』、ドラマ『POSE』も!


『mid 90s ミッドナインティーズ』

*映画好きが注目するスタジオA24制作で俳優ジョナ・ヒルのデビュー作。タイトルどおり90年代カリフォルニアのヒリヒリした空気感が刺さります。当時のやんちゃな10代男子の言葉を心がけつつ、気持ちは母親目線でハラハラしながら訳しました。苦労したのはFuckshit! 渋谷の映画館にはスケボー持って見に来る男子もいたとか。音楽も最高で、長男も大好きな作品です。

●こちらもお薦め→『アニマル・キングダム』


『冬時間のパリ』

*時代の流れに翻弄されるパリの出版業界を舞台に描くオトナの恋愛事情。しゃべりっぱなしで固有名詞も多いので字数制限内に収めるのに苦労しました! でも主人公たちが同年代ということもあり、共感したりつっこんだりしながら訳しました。ジュリエット・ビノシュの美しさに驚愕します♡

●こちらもお薦め→『田園の守り人』『12か月の未来図』『世界にひとつの金メダル』『イーダ』


『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

*1970年代、テニスの女王と呼ばれたビリー・J・キングが、55歳の元世界王者ボビー・リッグスに、男女平等のために対決した世紀の一戦を描きます。キング役はエマ・ストーン! テニスの試合のシーンが多いので、実際の試合の中継を見て言葉を学んだり、テニス好きの友人に聞いたりして字幕の参考にしました。スポーツ、恋愛、男女差別、LGBTQを見事にエンタメにまとめ、スカッとしてキュンとするお勧めの作品です。

●こちらもお薦め→『ペトルーニャに祝福を』『たちあがる女』『海に向かうローラ』『さよなら、ぼくのモンスター』『ハートストーン』


『セバスチャン・サルガド / 地球へのラブレター』

*巨匠ヴィム・ベンダースがサルガドの長男の協力を得て完成した、写真家サルガドのドキュメンタリー。社会の闇を撮り続けて心を病んだサルガドが、故郷ブラジルの自然に癒やされていく姿を追います。英語、ポルトガル語、フランス語が混ざり、ドキュメンタリーなので情報の確認や裏取りが大変でしたが、作品に入り込んでサルガドの分厚い写真集を買ってしまいました。(写真集もすごくいいです!)

●こちらもお薦め→『娘は戦場で生まれた』『ルック・オブ・サイレンス』『ロマン・ポランスキー 初めての告白』『異端の鳥』『フェンス』『ロマン・ポランスキー 初めての告白』


『ぼくを探しに』

*『ベルヴィル・ランデヴー』や『イリュージョニスト』など大人のアニメを描くシルヴァン・ショメ監督の初の実写長編。ファンタジーと音楽にほろ苦さが混ざった作品で、その雰囲気を生かす字幕を心がけました。個人的に大好きな作品です♡

●こちらもお薦め→『きつねと私の12ヵ月』


『ムカデ人間』三部作

*文字どおりの作品です。閲覧注意なのでリンクは貼りません! 1作目は笑えて好きですが、どんどんエスカレートします。詳しくは「お話する仕事」のインタビューをどうぞ!

●こちらもお薦め→『ブルーリベンジ』『肉』


★まだまだ、お薦めあります!

『オレの獲物はビンラディン』『ハイ・ライズ』『ぼくたちのムッシュ・ラザール』『ディスコ』『蛇男』などなど♪


【主なドラマ作品】

『ビリオンズ』

NYを舞台にヘッジファンドの異端児でビリオネア(億万長者)と、彼の逮捕に執念を燃やすNY検事局長の対立を描くドラマ。最先端の金融セオリーや用語に、法律用語まで絡んだ群像劇で翻訳者泣かせですが、金融翻訳の専門家が監修(神!)につき、吹替翻訳チーム、担当者と協力して乗り切っています。金融や実業界、スポーツ界の大物やスターシェフが実名で登場したり、通にはたまらないシリーズです。


『POSE』

こちらも舞台はNY。1980年代終わりから1990年代のラテン系、アフリカ系のゲイカルチャーの話です。マドンナやMCハマーなど当時の音楽がガンガンかかり、サントラが最高! 『Glee / グリー』の製作者らしく、派手に騒ぐ主人公たちの光と闇を音楽に乗せて描きます。ビリー・ポーターがLGBTQとしてエミー賞を初受賞した、私も大好きなシリーズ♡


『貴公子探偵ニコライ』

『マスケティアーズ/三銃士』

『リターンド』

『マンハッタンに恋をして~キャリーの日記』

『荒野のピンカートン探偵社』

『私と彼とマンハッタン』

『王立警察ニコラ・ル・フロック』

他多数。

あっという間に日常へ。2025年が動き出しましたね。

今年は月1で読書日記も書いてみようと思います。


この半年は「積ん読」を減らすべく、棚に眠っていた本を積極的に読んでいます。

『翻訳者の仕事部屋』は初版が1999年、手元にあるのが2000年の第2刷なので、どれだけ眠っていたのやら。

私のは飛鳥新社のハードカバーですが、今はちくま文庫から出ているようです。

著者は名だたるミステリーや『アンネの日記(完全版)』などを訳されてきた深町眞理子さん。

私が翻訳の勉強を始める前、まだアメリカにいた頃に父が送ってくれたもので、中に父の手書きのメモが挟まれていました。(メモは当時も読んで、そのまま挟んでおいたらしい。)


当時は翻訳者に憧れていたものの、それを仕事にする具体的なイメージが湧かず、子育てをしながらモヤモヤしていた時期。

本をパラパラとめくってみたものの、自分の世界とかけ離れすぎていて、読むのをやめてしまったのを覚えています。

今回、朝の15分読書の1冊として読んでみたら、ミステリーをこよなく愛し、文芸翻訳で身を立ててきた深町さんの覚悟と潔さと軽快さを、しみじみと感じました。


深町さんの子供時代やミステリー絡みの話も面白いのだけど、翻訳者としてガツンとやられたのは後半の「フカマチ式翻訳実践講座」

この部分だけ横書きで、原文と詳しい説明付きで訳例があり、この説明が同じエンタメ翻訳者として深くうなずくことばかり!

(いえ、同じというのも、おこがましいのですが。)


詳細はぜひ本で確認していただくとして、フカマチ式翻訳4原則をシェア↓

第1条 外国語ないし、それを日本語に翻訳するという作業に謙虚さを持つこと。

第2条 物語の背景、作者の言わんとすることを的確につかむ想像力を持つこと。

第3条 日本語にたいするセンスを磨き、表現力を養うこと。

第4条 広範囲にわたる知識、教養を身にけること。


翻訳の勉強をした人なら、聞いたことがあることばかり。

1つ1つがとても大切なことなのに、日々の仕事に追われて忘れてしまったり、おざなりにしてしまったり。

身が引き締まる思いでした。

年始に読めてよかった1冊です。

明けましておめでとうございます

本年もどうぞよろしくお願いいたします


年末のブログで2024年を表す漢字を「旅」と書きました。

思うままに旅をしたら、旅はすっかり日常に。

今年もマイペースで旅を続けます。


さて、今年は年始にテーマとなる漢字を決めました!

(友人がやっていたのでマネっこ)

2025年のテーマは「選」

10年後を見すえて、何をするか何をやめるか選ぶ年にします。

好きなことをやるのは得意だけれど、やめたり捨てたりは苦手な私。

今年は「10年後の理想の生活」を念頭に、やること、やらないこと、やめることを選んで行動していきたい。


これ、実は年末年始に一気読みした『生きのびるための事務』の影響を大いに受けています。

坂口恭平さん原作の漫画で、何人かの友人から薦められて読んだら、めちゃくちゃ面白い!

その中で、自分の24時間を円グラフにして、さらに10年後の理想の24時間を円グラフに描くという話があり、早速やってみました。

これがもう、とにかくワクワクする作業!


ポイントは、理想の24時間には好きなこと、やりたいことだけを入れること。

何しろ理想ですから。

ついTo Doを入れそうになり、慌てて消したりしながら描き上げました。

そうしたら、私は字幕翻訳という仕事が大好きなので、今の24時間が理想の24時間に近いことに気づいたんです。

環境さえ整えれば、10年後と言わず、もっと早く実現できそう!

好きな仕事ができることに改めて感謝が湧き、早く環境を整えたくてウズウズ。

そのための取捨選択、「選」です。


皆さんは「10年後の理想の生活」で、どんな24時間を過ごしますか?

それを実現できるのは、どんな環境?

理想の24時間の円グラフ、ぜひぜひ描いてみてください♡


さて、2025年のお知らせです。

vShareR映像翻訳祭2025(1月24~26日、オンライン、アーカイブあり)に2回登壇します!

【24日】中沢志乃さん、堀上香さんと「歌詞字幕」について対談(ドキドキ)

【25日】映像翻訳者の会 Wakkaによる「Wakkaラジオ」

・後半「中堅が振り返る7年目の壁」チオキ真理さんをゲストに迎え、運営すーさん(横井和子さん)と3人で対談(ワクワク)

・前半は「新人が聞くリアルモヤ1アワー」です!

*1月5日まで早割あり!


字幕担当作の公開予定

「Playground / 校庭」(ベルギー映画)3月7日より全国ロードショー

・小学校に通い始めたノラの視点で描く学校の風景。新しい世界や友達と出会い、大好きなお兄ちゃんやパパを見る目が変わっていくノラの気持ちが、痛いほど伝わります。

子どもの言葉を字幕にするのは字数との闘いが厳しさを増すけれど、楽しい!

カンヌ映画祭国際批評家連盟賞


「We Live in Time(原題)」6月より全国ロードショー

・アンドリュー・ガーフィールドとフローレンス・ピューの人気俳優2人がカップル役を演じるラブロマンス。ピューちゃんの口が悪いけれど憎めない感じ(役柄です)を意識して訳しました。

胸に刺さるセリフがいくつもあるので、字幕で伝わるとうれしい。

大好きな作品です。

(リンクでは「アルマ」とあるけれど、アルムートです!)


写真は元旦に実家から見た夕暮れ。富士山がくっきり♡