アカデミー賞の授賞式に合わせて受賞作やノミネート作の映画公開が続いています。
映画ファンにとっては嬉しい悲鳴を上げる日々。もう少し公開をずらして~!と叫びつつ、仕事の隙を見ては、いそいそと映画館に通っています。
ボブ・ディランの無名時代からスターになる数年を描いた『名もなき者』は、シャラメのなりきりぶりも、石田泰子さんの字幕(特に歌詞!)も最高!キャストも音楽も歌詞も素晴らしくて必見です。
で・す・が、そのあとに観た『アノーラ』が好きすぎました!
アメリカのセックスワーカーを温かい目で撮り続けるショーン・ベイカー監督ですが、今回はロシアの大富豪が絡んで話の規模が大きくなり、ドタバタコメディ要素も満載。「シンデレラ・ストーリー」の宣伝文句を「け!」と一蹴するような小気味よさ。カンヌやアカデミーの賞を総なめしたのも納得。
アメリカ社会の底辺のほうに生きる人々を包み込むように、同情せずジャッジせず成長を促しもせず、ありのままに描くベイカー作品は、ライムスター宇多丸さんの「落語の長屋もの」という評が言い得て妙! 男性は愛すべきクズで、女性はしたたかでたくましい。
字幕を担当させていただいた『レッド・ロケット』はクズ男が主人公で「こいつ、クソだな」と思いながら訳しましたが(失礼!)。
今回の『アノーラ』(字幕は吉川美奈子さん)は大好きな『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(字幕は石田泰子さん)の女の子がそのまま大きくなったような、ちょっと繋がった感じがしました。
でね、『アノーラ』を観たあとに「あ~訳したかったな!」って思ったんです。吉川さんの字幕は素晴らしくて、それをどうこうしたいというんじゃなくて、ただ好きだから訳したい!
社会からはみ出した人たちを描いた作品が好きで、そういう人たちの感情が溢れ出る言葉を訳すのが好き。その人の本音が見える言葉や会話、心をぶつけ合うような言い合い。それをピッタリの日本語に変換できたと思えた時が最高!
改めて、そう実感しました。
私にとって、ロードムービーも天才や偉人の人生譚も、おなかがキリキリするようなサスペンスも、サイコな殺人鬼やマッドサイエンティストのホラーも、弾けまくったミュージカルもキラッキラなファンタジーも、多かれ少なかれ世間からはみだした人たちの物語。だから、好きなジャンルを聞かれると、ちょっと困るのかも。
さて、現在公開中の字幕担当作『Playground / 校庭』も、小学校になかなかなじめず“はみだしてる”ノラちゃんのお話。アカデミー賞絡みの大作がズラリと並ぶ中、健闘しております!映画館で没入して観たい作品なので、劇場へ足を運んでいただけると嬉しいです。
また、フランス映画祭2025で公開される字幕担当作『My Everything』は、発達障害の息子の自立と向き合うシングルマザーのお話。こちらも、彼女の本音が炸裂するセリフが刺さりすぎて、訳すのが痛かったくらいです。3月22日の上映日には、監督の舞台挨拶もあります。タイミングが合えば、こちらもぜひ!
というわけで、しばらく映画日記が続きそうな予感です♡
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